福岡大学 A棟2階A203教室
11月21日(日) 9:30−10:45
ブランドエクイティという言葉がある。それは次のように定義される。消費者のブランド製品にたいする典型的な反応は、
たとえば、Aというブランド製品に対しては、ノーブランドの同種製品に対してよりも、より高い価格で買う、あるいは、買ってもよい、
と考える購買態度や行動である。このように、個々の消費者が、追加的に支払う、あるいは、支払ってもよい、と考える価額を、
すべての消費者について集計し、消費者のAブランドへの年間追加総支出額を、ブランドに起因する追加的キャッシュフローと考え、
これを割引率で割り引いた資産価格が、Aブランドのブランド資産価値、ブランドエクイティである。その顕著な特徴は、ブランドエクイティは、
そのブランドをもつ企業の資産であるものの、土地や建物といった企業の所有物の価値ではなく、「消費者の心の中に醸成された当該企業の価値」であるという点である。
福岡大学都市空間情報行動研究所(FQBIC)は、これまで過去10数年にわたり、福岡市都心部を訪れた来街者を対象とした消費者回遊行動調査を継続して実施し、
都心部来街者の空間選択と消費選択の同時記録データである消費者のマイクロ行動データを体系的に収集し、これらのデータの解析にもとづいて、
1996年から1998年にかけての福岡都心部の大規模商業再開発によって、人の流れからみた天神の重心が105m南下したこと、
また、都心100円バスの経済効果が年間109億円であることを検証するなど、消費者行動アプローチによる様々な試みを行ってきた。
日本不動産学会設立20周年記念シンポジウム「都市再生と都市エクイティ」の一つの問題提起は、都市においてもブランドエクイティと同様、「その都市を訪れる来訪者の心の中に醸成される当該都市の都市魅力の価値」を「都市エクイティ」として認識することが大切であり、これをどのように形成、育成していくかが今後の都市政策にとって重要であるとの問題提起である。
ワークショップ「消費者行動と都市エクイティⅠ、Ⅱ」は、この問題提起を、更に敷衍し、消費者の回遊行動分析から、福岡市や熊本市、 藤沢市の都心部の魅力評価や整備課題の摘出をおこなった具体的研究事例をとおして、都市エクイティ分析への消費者行動アプローチの試みについて議論し、
今後の都市エクイティ研究の方向性を探ろうとするものである。
本ワークショップ「消費者行動と都市エクイティⅠ」では、FQBICの研究事例とともに、九州大学出口研究室による福岡市都心部、
熊本大学両角研究室による熊本市中心市街地の研究事例を取り上げ、都心魅力の要因を消費者行動、商業環境の側面から多面的に議論するとともに、商業地の評価や地価との関連などを議論する。
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